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受けていますか?女性のためのがん検診

2度の子宮がんを経験して
女性のみなさんに私が伝えたいこと

原千晶さんインタビュー【前編】

原千晶さん

からだの異変に気づきながらも、
病気と結びつけて考えることができませんでした。

30歳で子宮頸(けい)がん、35歳で子宮体がんと2度のがんを経験された女優の原千晶さん。現在は、女優業のかたわら、患者会を運営したり、がんに関する講演会を行ったりと、啓蒙活動にも力を注いでいます。がんとの闘病を振り返って、今思うこと、女性たちへのメッセージ、今後の活動などについて語っていただきました。前後編でお届けします。

最初に子宮頸がんが見つかったきっかけを教えてください。

原さん:もともとすごく生理が重いほうだったんですが、それが徐々にひどくなっていきました。ほかにも不正出血があったり、おりものがふえて、今までにない色だったりと、いろいろな異変がつづきました。初期の子宮頸がんは症状が出ないケースが多いようですが、私の場合は症状が強く出ていました。
 これはちょっとおかしいなとは思いながらも、「生理がちゃんと来ているから平気だろう」と思い込んでいました。女性にとって、こうした症状が病気に直結する可能性があるという意識が、あまりにも希薄だったのかもしれません。がん検診も受けたことがないどころか、その存在すらよく知りませんでした。
 2004年の年末でした。がまんできないほど具合が悪くなり、レディースクリニックに駆け込みました。すぐに精密検査が必要といわれて大学病院に行きました。そこでは、「子宮の頸部に腫瘍がある。採取して病理検査をしないと何ともいえない」と医師から告げられました。それでも私は、よくあるポリープみたいなものだろうと軽く考えていました。そして、翌年2月に円錐切除術の処置を受けることになったのです。

円錐切除術は検査と治療を兼ねた手術ですね。

原さん:はい。手術自体は本当にあっけなくて、眠っている間に終わりました。術後は体調がどんどんよくなって、2〜3日で退院することができました。こんなに簡単ならもっと早く病院に行けばよかったと思うくらいで、すごくすっきりした気分になりました。
 退院してから2週間ほどたち、検査結果を母と一緒に聞きに行きました。母は手術前に郷里の北海道から上京してきてくれて「結果を聞いて、安心してから帰るわね」といっていたのですが、主治医からはっきり「がんです」と告げられました。
 私も母も、ものすごく衝撃を受けましたが、がん自体はすでに手術で取り去っているので、それで終わりかなとも思っていました。しかし、私のケースは「進行が早く、悪性度が高いと思われるがん」ということで、再発や転移のリスクを減らすためにも、子宮をとる再手術を主治医からすすめられました。
 当時、私は独身で将来、子どもを産みたいと思っていたので、「がん」という診断以上に、「子宮をとったほうがいい」という主治医の言葉のほうが、大きな衝撃でした。隣で告知を聞いていた母親も息をのみ、私の手をギュッと握ったことを今でもはっきりと覚えています。不意打ちで谷底に突き落とされたような心境でした。
 主治医は「残酷な宣告ではあるけれど、今なら子宮をとるだけですむかもしれない。あなたにこれからも元気で活躍してもらうための診断なので、どうか理解してほしい」と、誠実に話してくださいました。

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苦しさの根っこには「知識不足」があった

女性として本当につらい選択を迫られたのですね。

原さん:理屈ではわかったつもりでも、私の心は、「なんで私だけがこんな目に」と閉ざされていくばかり……。結果的に、1度は受けると決心した子宮全摘出術を断り、子宮を温存することを選択したのです。今でも自分が選択したことに後悔はしていません。ただ、もし今の自分が、当時の自分に会えるなら、がんという病気の現実を伝えて、「もっとしっかり向き合いなさい」といいたいですね。
 どんどん医学が進歩して、がんは必ずしも怖い病気でなくなってきましたが、命をおびやかす側面もしっかりもちつづけているというがんの現実。私はその後、再び自分ががんになり、さらに何人かの友人をがんで亡くしました。がんの現実に直面して、当時、主治医が懸命に話してくれた言葉が、あとになって胸に重く響きました。

実際にがんで死亡するリスクは、男性の4人に1人、女性の6人に1人という調査結果が出ているように、医学が進んでも、がんは命にかかわる病気です(「国立がん研究センター」より)。

原さん:がんと向き合うには、冷静な判断力が必要です。ときには残酷ですが、やはり決断しなければならないこともあるんですよね。
 それから私はずっとがんとつき合っていくことになるのですが、この時期がいちばんつらく、苦しかったです。その大きな理由に「知識不足」があったと思います。「なんだかよくわからない」ということが、人間にとって大きなストレスであり、「どうすればよいかわからない」ということが、すごく苦しかったんだと思います。
 がんと向き合うには患者側も正しい知識をもつことが大切だということを、痛感しました。私は「がんは、若い人はならない病気」とか、「がん=死」とか、いろんな偏見や間違った知識をもっていました。そして、自分ががんになったとき、私は現実のこととして捉えられずに逃げてしまったのです。

検診から足が遠のき……。2度目のがんが牙をむいてきた

手術後は、定期検診をずっと受けていたのですか?

原さん:子宮を温存することを決断したときに、主治医から「1カ月に1度の検診は絶対に受けてください」と念押しされました。当初は毎月欠かさずに受けに行っていました。しかし、手術から2年半を過ぎるころから、次第に足が遠のいていました。
 月1度の検診自体が大変だったというわけではありません。ただ、悪性度の高いがんだった私が子宮を温存するという決断をしたのなら、何をさておいても検診に行くべきだったのです。
 でも、周りを見ると、みんな元気に働いて、子育てをして、いちばん充実している年代です。がんになったときのように、「なぜ私だけが……」といった気持ちが強くありました。そして、言い訳になってしまいますが、お昼のドラマに出演することになり、仕事が忙しかったということもあります。

今のご主人と出会われたのは、そのころですか?

原さん:彼は、そのドラマのプロデューサーでした。とてもあたたかい雰囲気をもっていて、一緒にいるだけで癒やされる人。それは今も変わりません。
 おつきあいが深まるなかで、以前に私ががんになったことは伝えていました。「つらかったね」といってくれましたが、すぐに「定期的に検査とかに行かなくていいの?」と聞かれました。ドキッとしながら、「今は、調子がいいから。そのうち行くよ」と答えていました。
 検診から足が遠のいて2年ほどたったころから、生理のときの出血量がすごくふえたり、水みたいな無色透明なおりものがふえてきました。そのときは年齢的な問題かなと思っていました。あとで知ったのですが、こうした症状は子宮頸部腺がんの特徴だそうです。

2回目のがんが見つかったきっかけは?

原さん: 2009年12月、このときもドラマの撮影中でしたが、今まで経験したことのないほどひどい生理痛がおこりました。鎮痛薬も効かず、意識が遠のくほどになりながら、病院に駆け込みました。詳しい検査を受けると、「なんでこんなになるまでほうっておいたの」と叱られました。
 あと2カ月で、最初の手術から5年というときでした。「逃げ切れると思っていたけど、甘かった」と思いました。子宮頸がんの再発だと思ったのですが、詳しく検査すると、子宮体部にできた新たながんでした。
 私が3年近く検診をサボっていた間に、今度は子宮体がんができ、進行して頸部に広がっていたんです。さらに、骨盤の中のリンパ節に転移しはじめていました。「このままでは命にかかわる。早急に子宮をとる大きな手術と抗がん剤治療が必要」といわれました。牙をむきはじめたがんの怖さを、思い知らされました。

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反響の多さに驚き、「私だけじゃない」と救われた

2010年に病気のことを公表されましたね。その理由を教えてください。

原さん:最初の子宮頸がんのときは公表していなかったのですが、もうこれ以上は隠せないと思い、治療がひと段落し、抗がん剤で抜けた髪の毛が、ほやほやっと生えてきたころに、ウィッグ(医療用のカツラ)をつけてみなさんの前に立ちました。その1カ月前に主人と結婚したので、同時に発表させていただきました。
 公表したことで、すっきりして、楽になりました。そのあとから、報道を見た全国の人から「私も同じ経験をしました」という声が、ブログにあふれるように届いたんです。

ブログのコメントを読んで、心境の変化はありましたか?

原さん:同じ経験をしている者同士しかいえないような内容のものも多くて、ホッとしたというか、とても救われた気持ちになりました。ずっとずっと「なんで私だけが」という、すねた気持ちがぬぐい去れずにいたので。
 自分と同世代、あるいは自分よりも若い人が乳がんや子宮がん、卵巣がんといったがんで闘病されているというコメントを読んだときに、「私はどれだけ狭い視野で生きてきたんだろう」と、気づかされました。
 それから、寄せられたコメントに1つ1つ返信していきました。そのうちに、インターネットだけでなく、みなさんに実際に会ってみたいという気持ちが芽生え、患者会の立ち上げにもつながっていきました。そして、私と同じような思いをする人を少しでも減らしたいという思いから、がん検診の啓蒙にも取り組みはじめました。

子宮頸がんの検診受診率は42.3%(2016年国民生活基礎調査より)、がん検診を受けない人のほうが多いという結果も出ています。

原さん:とにかくがん検診を受けてほしい。今の私にできるのは、悔やんでも悔やみきれない自分の体験を語ることだけです。とくに若い女性のみなさんに、悪い見本である私のようになってほしくないんです。
「生理が来ていれば平気」とか、「おなかが痛くなければ大丈夫」とか、勝手な自己判断をしないで、少しでも気になることがあれば、すぐに診察を受けてください。
 子宮頸がんは、がんになる前の前がん病変から発見できます。子宮頸がん検診は、子宮の入り口の細胞をちょっとこそげとるだけの簡単な検査です。
 とくに「これから赤ちゃんを産みたいな」と思っている女性であれば、いちばん大切なのは、自分が元気でいること。健康でなければ、妊娠・出産もできないし、子育てもできません。
 将来あなたが、命をかけて守らなければならない存在を得るには、そして、それを守るには、自分が元気でいることが大前提です。「今は若いから大丈夫」などと過信せずに、また怖がらずにがん検診を受けて、ご自分のからだを守ってください。声を大にして伝えていきたいですね。

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女性のがんである乳がんと子宮頸(けい)がん。乳がんは40代、子宮頸がんは30代が発症のピークです。どちらも早く見つければ治りやすいがんなので、対象年齢になったらがん検診を受けましょう。

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子宮頸がん
 子宮は洋梨を逆さにしたような形の袋状の臓器で、腟につづく入口付近は細くなっています。細い部分を「子宮頸部」といい、ここにできるがんが「子宮頸がん」です。子宮頸がんの多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスに関係することが知られています。
 子宮頸がんは30〜40代に多いがんですが、20代にも急増しており、厚生労働省では、20歳以上の女性を対象に2年に1回の子宮頸がん検診を推奨しています。検診は、腟から挿入した綿棒などで子宮頸部の細胞をこすりとって顕微鏡で調べるもので、簡単に受けられます。
円錐切除術
 病巣部を含め、子宮頸部を円錐形にくり抜くように切除する方法です。開腹せずに腟から器具を挿入して切除するため、短期間の入院で行えます。切除した組織を病理検査することで、病変がどの程度進んでいるかを調べることができます。また、異形成や上皮内がんであれば、検査と治療を兼ねて行われることもあります。
子宮頸部腺がん
 体液やホルモンなどを分泌する器官を「腺」といい、そこにできるがんを「腺がん」といいます。子宮頸がんの場合、多くは腟に近い部分にできる「扁平上皮がん」ですが、全体の4分の1ほどは子宮体部の近くにできる「子宮頸部腺がん」です。
子宮体がん
 子宮の球形に近い部分は、赤ちゃんを育てる場所で「子宮体部」と呼ばれます。ここにできるのが「子宮体がん」で子宮内膜がんとも呼ばれます。50〜60代に多いがんですが、近年はすべての年齢層でふえています。
 病状が進行していない早期の段階で出血することが多く、不正性器出血での発見が90%以上といわれています。少量でも不正出血があれば、すぐ婦人科を受診しましょう。月経不順、下腹部痛、排尿時痛なども、子宮体がんでみられる症状です。
前がん病変
 子宮頸がん検診では、まだ完全にがんになってはいないものの、がんになる可能性の高い変化(異形成)をおこしている細胞が見つかることがあります。これを前がん病変といいます。子宮頸がんの前がん病変は、検診によって発見されるケースが多くみられます。